稀代の錬金術師。孫正義氏は何をしようとしているのか。

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ソフトバンクについては、その昔から孫正義氏の強気な投資戦略のため、危険であるという話が絶えない。
しかし、孫氏の時代を読む先見性もまた、他の追随を許さない優れたものとなっている。日本だけでなく世界を見据えた投資戦略は優れたものがある。そして今回、今までの規模を大幅に上回る投資ファンドの計画がある。何が彼をそうさせているのだろうか。


[ロンドン 19日 ロイター BREAKINGVIEWS] -

ソフトバンクグループ(9984.T)は「身銭を切る」という概念を極限まで拡張してしまったようだ。

米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)によると、同社は孫正義社長をはじめとする従業員に対して、「ビジョン・ファンド」2号に投資する資金として、最大200億ドルの融資を行うことを計画している。

従業員に身銭を切った投資を勧める今回の計画は、2号ファンドに出資するアップル(AAPL.O)やマイクロソフト(MSFT.O)にとっては朗報だろう。だが、2号ファンドが失敗に終われば、ソフトバンクの損失は雪だるま式に増える恐れがある。

ベンチャーキャピタルの従業員が、自社ファンドに自己資金を投じることは普通だ。従業員が自己資金を投じていれば、投資家の安心感が高まるからだ。

特にソフトバンクの場合は、これまで極めて価値の高いスタートアップ企業を買収し、評価額を上げてビジョン・ファンドに移管してきた経緯があるため、投資家の安心感はいよいよ高まる。孫氏が自己資産220億ドルから多額の資金を拠出するのであれば、同氏による利益相反行為の可能性も低下するだろう。

ただ、報道された従業員向け融資の規模は異例だ。200億ドルは、2号ファンドの調達目標額1080億ドルの19%に相当する。インベステックによると、大半のファンドでは従業員の投資額は平均2─3%にすぎない。

孫氏でさえこれほど巨額の資金は手元にないとみられ、WSJによると、資金はソフトバンクが金利5%で従業員に融資する。

2号ファンドの資産価値が低下したと想像しよう。これはあり得ないことではない。ビジョン・ファンドの最大の投資先の1つであるウーバー・テクノロジーズ(UBER.N)の株価は過去3カ月で18%下落している。

ファンドの資産価値が低下した場合、従業員の持ち分は融資の額面を割り込むだろう。WSJによると、従業員向け融資全体の半分強は孫氏向けの融資になる可能性がある。ファンドの価値が低下すれば、孫氏は自分が設立した会社への返済のため、保有するソフトバンク株22%を売却するかもしれない。

ただ、ソフトバンクは他の従業員向け融資で損失を被る可能性がある。ソフトバンク自体も同ファンドに380億ドルを出資する計画で、ファンドの価値が低下した場合、ソフトバンク自体も損失を被る。

なぜこのような危ない橋を渡るのか。1号ファンドは大半の資金を投資済み。2号ファンドが始動すれば、高値圏にあるハイテク企業の価値を下支えする一因となるかもしれない。

だが、1号ファンドに巨額の出資をしたサウジアラビアは、2号ファンドへの参加をまだ決めていない。サウジが参加しなければ、ソフトバンクはほぼ自力で目標額1080億ドルの達成を目指すことになる。その過程で同社がつまずくリスクがある。


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